移植
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当院における腎移植後のエベロリムス使用戦略
石山 宏平奥村 真衣安次嶺 聡三輪 裕子岩﨑 研太小林 孝彰
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s311

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抄録

エベロリムス(EVR)は免疫抑制作用以外に、CNI減量による腎毒性の軽減、CMV・EBVなどのウイルス感染症抑制効果や抗腫瘍効果などが期待される。当院では現状の維持免疫抑制療法に課題がみつかった時期にadd on もしくはconversion therapy としてEVRを使用している。

2012年以降に当院で施行した生体腎移植214例のうち43例にEVRを使用した。移植直後からEVR開始した14例を除いた29例(拒絶反応8例、癌発症1例、ウイルス感染症11例、細菌感染症3例、CNI毒性3例、心血管イベント1例、代謝拮抗薬有害事象2例)に対してEVR併用を行った。MMFから変更するか、標準的三剤にEVRを追加するかは症例毎に決定した。EVR併用時に使用されていたCNIは、CyAが19例、TACが10例であった。適宜血中濃度測定を行いトラフ値(C0)に加えて、AUC(0-4h)を算出することで免疫抑制療法の指標とした。EVR併用時期は移植後平均811±915日であった。EVR併用後の腎機能は併用前の血清クレアチニン値が2.2±0.9mg/dlから半年後で2.0±0.6mg/dlと改善傾向を示した。EVR併用後に尿蛋白漏出、脂質代謝異常が悪化した症例は認めなかった。移植直後からEVR開始した14例を含め、経過中にEVRを中止した症例を10例(拒絶反応1例、EVR関連間質性肺炎1例、感染症4例、その他4例)認めた。

EVR併用に伴う臨床所見の改善効果を十分に認めたが、過剰免疫抑制とならないように使用免疫抑制剤の定期的なTDM管理を行うことが重要と考えられる。

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