2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s312
本邦での添付文書上、エベロリムス(以下EVL)の効能又は効果は、心移植、腎移植、肝移植における拒絶反応の抑制とされている。
一方で、抗ウイルス効果も着目されており、日本移植学会より腎移植後3か月以内にCOVID-19を発症した場合、MMF減量、EVLをadd onする調整法が公表され、基礎研究においては、EVLによりサイトメガロウイルス感染細胞数が減少した報告もある。
近年当院では、拒絶反応の抑制のみならず、抗ウイルス効果にも着目し、腎移植後3カ月以上経過し、移植腎機能が安定している希望者を対象に、EVLのadd onを開始した。添付文書上の副作用として、腎障害(10.6%)、感染症(23.1%)、高脂血症(16.0%)、移植腎血栓症(0.4%)等が記載されている事から、当院でのEVL add onの開始基準を、1)尿蛋白定性陰性、2)総コレステロール値基準値内、3)Dダイマー基準値内としている。導入はEVL 0.5㎎/日より開始し、副作用が疑われる症状や検査結果が無い事を確認してから、1.0㎎/日、1.5㎎/日と徐々に増量している。現時点ではEVL add on開始後、特に重大な合併症なく、中断者ゼロで経過している。
また、具体的な1例として、腎移植後1年以内に、顆粒球減少症を伴うサイトメガロウイルス初感染の症例に、各種薬剤調整およびEVLをadd onすることで、血液製剤を使用することなく軽快し、その後も臨床的に拒絶反応無く経過している1例を経験したので、併せて報告したい。