2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s319
背景:近年,家族の若年化や経済的困窮,ひとり親世帯など家族背景が複雑化し育児の負担が増大している.小児生体肝移植看護では患児に加えて生体ドナーを含めた家族への長期の包括的支援が必要となる.
方法:過去3年間に実施された小児生体肝移植症例を病棟看護師の語りを通して振り返り,移植看護の現状と課題を分析した.
結果:移植適応の可能性が浮上した早期から医師・看護師・移植コーディネーター間で情報を共有し,生涯ケアを念頭に特に移植コーディネーターと家族の有効な関係構築支援を心掛けてきた.社会的問題の解決が必要な症例では移植前より外来や地域連携部門と協働を行った.周術期オリエンテーションは入院前から外来・病棟共通の資料を用いた指導が,生体ドナーの意思決定支援の観点からも重要である.移植前の家族の不安が医療者への不満となり表出された症例では,移植後に想定される様々なトラブルシューティングについて多職種間で術前検討を行った.これは家族の不安解消だけでなく移植チーム全体の安心感にも繋がった.退院支援では,怠薬による再移植の経験から患児の発達段階や家族背景に応じ学校との調整を行った.
結語:小児生体肝移植前後の看護は成長発達的課題と生涯を見据えた長期的ケアが特徴である.外来・病棟で一貫したケアを提供すべく移植コーディネーター・病棟看護師を含め多職種による患児・家族の支援体制確立が不可欠である.