移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
当科における生体腎移植周術期でのDaprodustatの安全性と有効性の検討
佐藤 優野口 浩司目井 孝典加来 啓三岡部 安博中村 雅史
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s326

詳細
抄録

【背景】近年、腎性貧血に対して低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬が使用されている。HIF-PH阻害薬はエリスロポエチン産生を誘導するだけでなく、様々なHIF-1α標的遺伝子を活性化することで腎保護作用を示すとの報告もあるが、腎移植患者への使用に関する報告はほとんどない。

【対象と方法】2019年6月から2021年4月までに当科で生体腎移植術を施行した18歳以上の患者のうち、タクロリムスおよびミコフェノール酸モフェチルを用いて免疫抑制剤の導入を行った患者を対象とした。周術期にDaprodustatを内服開始した群(Daprodustat群)と開始しなかった群(対照群)とで、傾向スコアマッチング法を用いて術後2週間の周術期アウトカムを比較した。Hb値、eGFRの変化の比較には反復測定分散分析を用いた。

【結果】対象患者はDaprodustat群12例、対照群73例で、傾向スコアマッチング後はDaprodustat群12例、対照群12例となった。術前から術後2週間でのHb値は2群間で有意差はなかった。術前から術後2週間のeGFRの平均値はDaprodustat群で有意に高い結果となった(p=0.035)。周術期合併症(Clavien-Dindo分類≧III)やグラフト機能発現遅延の発症率に有意差はなかった。

【結論】生体腎移植周術期に、Daprodustat阻害薬は安全に使用でき、またグラフト腎機能発現に関して有利である可能性が示唆された。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top