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脳死下臓器提供におけるドナー家族へのケアの検討-家族とともに提供から1年を振り返る
佐川 美里田村 智高橋 恵関 一馬上村 由似片岡 祐一吉田 一成
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s328

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抄録

【背景】ICUにおいて脳死ドナーの発生は希少であり、その家族へのケアは手探りであることが多い。今回臓器提供から約1年後に、ドナー家族とともに入院から退院後の思いを振り返る機会を得た。【目的】ドナー家族の心情に寄り添ったケアへの示唆を得る。【方法】事例研究。JOTを介してドナー家族と病院スタッフでWEB面談を実施。面談記録から家族の入院から退院後の心情変化、有効であったケアを考察する。【事例】A氏壮年期男性、脳血管障害。入院後、妻より臓器提供の質問があり概要とその機会について説明。3病日、妻が本人の意思表示を発見し、14病日に脳死下臓器提供となった。【医療者の対応と家族の心情】1.入院中のケア:病状説明について、「治療の限界への変わらないスタンスがありがたかった」と表出し、家族ケアでは「家族それぞれに向き合ってもらえた」と振り返った。2.終末期の情報提供:医療者は悲嘆する家族に対し、臓器提供の選択肢の説明に躊躇したが、家族は「違う病院だったら臓器提供の選択肢もなく、亡くなるのを見送るだけだったかもしれない。A病院に来て、臓器提供できたことは意味があった。」と表出された。【結論】ドナー家族とともに入院から退院後の家族の思い・医療者の対応とケアを振り返ったことで、家族の揺れ動く心情に合わせた真摯なケアの重要性を再認識した。医療者の連携した関わりは、家族の満足度が高まることが示唆された。

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