移植
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東日本組織移植ネットワークにおける臓器提供との連携への課題
三瓶 祐次山内 治雄赤松 延久木下 修益澤 明広本村 昇長谷川 潔小野 稔田村 純人
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s341

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抄録

東日本組織移植ネットワークは2016~2020年の5年間に265件のドナー情報を受信し、77例の組織提供を得た。同期間東日本における腎臓提供数は192例であり主な組織バンクが対応地域としている関東地域に限った場合は115例(日本臓器移植ネットワークHPより)であった。組織提供と臓器提供が連携する機会は多く、ドナー情報受信では75.8%が臓器移植コーディネーター(以下Co.)からの入電であった。また、同期間中ドナー情報の連絡元施設として5件以上の連絡があったのは9施設(98件)、2件以上5件未満の連絡があったのは34施設(95件)と経験施設の連絡が占める割合が多く(72.8%)、提供施設にて組織提供も認知され、相互の連絡体制が定着しつつあることがうかがえた。対して、同期間中ドナー情報より問い合わせのみの24件を除く組織提供に至らなかった164件の検証では、医学的理由(60件)、本人拒否の意思確認や家族辞退(52件)に続き、組織バンク都合による辞退(19件)の占める割合が大きかった。各組織バンクの限定した対応の背景として、長年組織移植Co.の定着率が改善され得ず臓器移植医療に比べ人的資源が脆弱であることが挙げられる。提供体制維持と発展のために各組織バンクの基盤強化と連携の継続が重要であり、制度面の整備が望まれる。また、臓器提供の進展に伴い組織提供の協力が広がる一方で、組織移植への理解は未だ限られ、移植医療の広がりについてさらなる市民啓発が必要である。

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