移植
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肝細胞癌に対する肝移植の適応拡大に関する考察
赤松 延久市田 晃彦長田 梨比人石沢 武彰有田 淳一金子 順一長谷川 潔
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s347

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抄録

本邦では肝癌症例に対する肝移植の適応は「Japan基準」、すなわちミラノ基準あるいは5-5-500基準を満たすというdouble eligibility criteriaに拡大された。当院ではTokyo基準(5cm、5個以内)を拡大基準として適応してきた。2020年末までの165例の肝癌に対する生体肝移植において15例(9.1%)の再発を認め、5年生存率、再発率は82%、11%であった。5年再発率を基準ごとにみると、ミラノ基準、5-5-500基準、Tokyo基準、全患者でそれぞれ7.3%、7.1%、8.8%、10.4%であり、いずれの基準でも5年再発率は10%未満である。移植後再発のBiomarkerとして、教室の症例でAFP、AFP-L3分画、DCP、好中球リンパ球比、血小板リンパ球比を検討したところ、AFPのROC曲線下面積が最も大きく(0.852)、次いでL3(0.754)であり、AFPの有用性が確認できた。昨今、ミラノ基準はtoo strictであり、また従来の腫瘍の大きさ個数のみによる適応基準は不適切であるとのconsensusが得られており、腫瘍マーカーを含む肝癌のbiologyを加味した新基準の有用性の報告が多い。Japan基準もこの方向性に合致するものである。肝機能面では、一部のChild A症例やChild B症例で局所治療が不適応もしくは危険な患者においては、肝移植の成績が優ることは明確で有り、今後は、肝機能面での適応拡大が議論の対象と思われる。また再発高リスク群におけるimmunomodulationや補助化学療法の確立も今後の課題である。

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