2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s348
【背景】
肝細胞癌(HCC)を有する肝移植候補患者の選定にはミラノ基準が広く使用されていたが、適応拡大のため最近5-5-500基準が追加された. 一方で移植前治療の有用性は未だ確立されていない. 当施設の治療成績から移植前治療の意義について検証した.
【方法】
2000年から2019年に当施設でHCCに対して肝移植を施行した44例を対象として、移植前局所治療の有無, 初診時と移植直前の画像検査および術後最終病理診断においてミラノ基準に合致していたか否かを検証し, 移植後HCC再発の有無および長期予後を解析した.
【結果】
44例中31例でHCCに対する局所治療が行われ, 初診時ミラノ基準外11例のうち5例で基準内へのdownstageが得られていた. Downstage症例の5年生存率は手術時ミラノ基準外より有意に良好であった(100% vs 16.7%, p=0.017). Downstage 5例の内訳は、初診時腫瘍数3個以上3例、腫瘍径3cm以上2例で、5例全てで局所焼灼療法と動脈塞栓術の両者が行われていた. 移植直前の画像でCR判定された病変が病理診断でviableであった、あるいは画像上認識されなかったHCCが病理検査で同定されたことにより, 4例が病理学的ミラノ基準外であった(腫瘍数3個以上). 4例中2例は病理学的脈管侵襲も認めたが, 腫瘍径はいずれも基準内であった.
【結語】
Downstageが得られた症例は最終病理診断によらず予後良好であり, ミラノ基準外に対する移植前治療は有用な可能性がある.