2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s354
抗ドナーHLA抗体(DSA)は腎移植後抗体関連型拒絶反応発症のリスク因子であり、慎重な治療戦略が必要である。我々は2019年12月までにサイモグロブリン(ATG)導入療法により23例のDSA陽性腎移植を行なった。2019年12月からはIVIGが術前脱感作療法として保険収載されたので、IVIGプロトコールに変更して4例のDSA陽性腎移植を行った(観察期間3~13ヶ月)。ATGプロトコールではリツキサン(100mg´2)、血漿交換(3~4回)の脱感作療法を行い術後にATGを使用したが、IVIGプロトコールではリツキサン、血漿交換に加えIVIG(1~2 g/kg)を術前日に投与した。導入免疫抑制療法はバシリキシマブを用いた。IVIG投与時に副反応は認めなかった。術後3ヶ月時の評価では4/4例でいずれもDSAはMFI<1000に低下していた。移植腎機能は全症例で安定しており3ヶ月生検、1年目生検を施行できた症例では拒絶反応を認めなかった。一方、ATGプロトコールの3ヶ月生検では、56.5%でMVI陽性、および35%でカットオフ値以上のDSAが検出されていた。ATGプロトコールでは術後サイトメガロウィルス感染症は55%(バリキサ予防投与下)であったがIVIGではいずれも認めなかった。IVIG投与は安全に実施でき術後の抗体関連拒絶反応の発症も十分に抑制され、術後感染症のリスクも低く抑えられていた。IVIGの短期成績は非常に良好であった。今後さらなる症例の蓄積が必要である。