2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s36
近年、肝単一臓器障害でなく、他臓器疾患を合併した症例に対する肝移植も増加しつつある。さらに、小児の肝移植適応疾患の中には、原疾患に他臓器障害を合併する症例も多く存在する。しかし、小児肝移植領域において、肝移植時に他臓器疾患を合併した症例の予後については検討されていることが少ない。また、他臓器移植の適応も検討しなければならない症例も少なからず存在する。
当施設では2021年5月までに663例の18歳未満小児肝移植を実施した。先天性心疾患を合併した症例は22例に認め、2例に肝移植前に心臓手術を実施した。移植後に先天性心疾患に起因した合併症は認めなかった。肺高血圧症は4例に認め、移植後に全例で肺高血圧症の改善を認めた。肺内シャントは64例に認め、うち2例が移植後に増悪し死亡理由に関与していた。移植時に原病関連腎疾患もしくは肝硬変による肝腎症候群を合併していた症例は54例で、うち5例は腎代替療法が導入されていた。54例の腎疾患合併症例のうち、腎肝移植前6例に対し、肝移植後8例に対し、腎移植が対し施行されていた。炎症性腸疾患を10例で合併しており、9例が原発性硬化性胆管炎に併発していた。短腸症候群を5例で認め、2例で肝移植前に、1例で肝移植後に小腸移植が施行されていた。
今回、自施設における経験をもとに、他臓器疾患合併症例に対する肝移植医療の課題や最新の知見を、文献的考察を加えて報告する。