移植
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脳死肺移植レシピエントの胸郭内縦隔組織占拠率(Thoracic Mediastinal-Occupying Ratio: TMOR)は術後回復不良や予後不良を予測する
吉安 展将佐藤 雅昭安井 健高見 真此枝 千尋北野 健太郎中島 淳
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s447

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抄録

背景: 良好なドナー肺を移植しても人工呼吸器から長期離脱できず, 術後呼吸状態の回復が悪い患者が一定の割合いる. レシピエントの身体的特徴から, そのリスクを術前に予測できないか検討した.

方法: 2015年4月~2020年12月に, 脳死肺移植を受けたレシピエントを対象とした. 術後14日以上の挿管管理を要した場合を, 長期人工呼吸器依存と定義した. 対象患者を長期人工呼吸器依存群と非依存群に分類した. 男性, 扁平胸郭, 幅狭い肋間(<5mm), 重度の心臓偏移, 胸郭内縦郭組織占拠率(胸郭体積に対する縦隔組織の体積比, Thoracic Mediastinal-Occupying Ratio: TMOR)>0.4, サルコペニアを長期人工呼吸器依存の予測因子候補とした. 単・多変量ロジスティック回帰分析で予測因子を決定し, ログランク検定で予後との関連をみた.

結果: 対象患者51人の内, 長期人工呼吸器依存群は17人(33%)であった. 単変量解析では, TMOR>0.4(オッズ比 5.1, 95%信頼区間 1.5-17.8, p=0.011)と重度の心臓偏移(オッズ比 4.1, 95%信頼区間 1.0-15.7, p=0.043)に関連がみられた. 多変量解析で, TMOR>0.4(オッズ比 4.1, 95%信頼区間 1.1-15.0, p=0.035)のみが独立予測因子と判明した. 平均フォローアップ期間は2.0年で, 5人(10%)が死去した. TMOR>0.4のレシピエントの生存期間は, 他者と比べて有意に短かった(p=0.008).

結論: TMOR>0.4のレシピエントは長期人工呼吸器依存状態となり,予後不良となる可能性がある.

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