2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s456
抗体関連型拒絶反応に対する効果的な治療法は未だ確立されておらず、予防策が最も重要である。特にpreformed DSA陽性症例は抗体関連型拒絶反応のハイリスク群であり、術前脱感作療法および移植適応には慎重な判断を要する。当院ではpreformed DSA陽性腎移植症例に対して、FCXM陽性症例のみではなくCDC-XM陽性症例に対しても脱感作療法を行い、十分な脱感作が得られたことを確認した後に移植に臨んでいる。これまで18例のXM陽性症例に対して脱感作療法を行った後に腎移植を施行した。18例中、CDC-XM陽性であった症例が8例、FCXMのみが陽性であった症例は10例だった。また術前のリンパ球混合試験の結果、CD4陽性T細胞の抗ドナー応答が亢進していたため、induction therapyとしてATGの投与を10例に行った。ATGを投与した症例では術後にTCMRを認めなかったが、非投与症例の1例にTCMRを認めステロイドパルスを要した。全例、急性抗体関連型拒絶反応は認めなかったが、慢性抗体関連型拒絶反応のハイリスク群であり、慎重な経過観察が必要である。
以上、preformed DSA陽性症例に対して脱感作療法を行った場合、免疫学的リスクに応じて脱感作療法の成果を慎重に評価することが重要であり、また、脱感作療法自体がTCMRを誘発する恐れがあるため、術後十分なT細胞抑制が望まれる。