移植
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肺移植前後の非結核性抗酸菌症の治療成績
大角 明宏長尾 美紀栢分 秀直田中 里奈山田 義人豊 洋次郎中島 大輔伊達 洋至
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s48

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抄録

肺移植の適応条件として活動性感染がないことが挙げられる。当科では非結核性抗酸菌(NTM)感染について、治療による喀痰からの排菌の消失、画像上増悪がないことを適応基準とし、移植待機中も検査を反復している。2008年6月から2021年3月までに施行した261例を対象に肺移植前後のNTMの治療成績を検討した。移植前のNTM感染の既往は7例に認めた。1例は18年前のNTM後遺症に対する肺移植症例、1例は21年前の完治例であった。そのほか5例はいずれも造血幹細胞移植後肺障害に生じたNTM感染で、3例は加療により移植前に陰性を確認、2例は呼吸状態の悪化に伴い排菌無きことを確認した後に加療継続の上、生体肺移植を施行した。いずれの症例も移植後に感染の再燃なく全例生存中である。一方、移植後のNTM感染は13例に認めた。7例が抗菌薬加療後生存中だが、1例は膿胸に対して手術を施行した。残り6例のうち3例は慢性移植肺機能不全に対して再肺移植施行済もしくは待機中である。移植後NTM感染の6例が死亡し、死因は喀血1例、GVHD1例、肺胞タンパク症1例、慢性移植肺機能不全3例であった。移植前のNTM感染は治療介入により良好な結果が期待し得るが、特に造血幹細胞移植後肺障害症例では、術前の慎重な経過観察と適切な加療が肝要である。移植後は慢性移植肺機能不全への進展も危惧され、移植前と同様、厳密な管理体制が重要である。

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