移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
iPS細胞を用いた1型糖尿病に対する再生医療の開発
長船 健二
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s501

詳細
抄録

1型糖尿病に対する膵・膵島移植の有効性が示されているが、深刻なドナー不足の問題が依然として存在し、その解決策の開発が望まれている。近年、無限の増殖能と膵臓を含む全身の臓器の構成細胞種への分化能を有するヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)から作製される細胞種の移植によって臓器機能の回復を図る再生医療が注目を集めている。1型糖尿病も再生医療の対象疾患として、その開発研究が精力的に進められている。演者らも、発生過程を再現する独自のヒトiPS細胞から胎生期膵前駆細胞を経た膵島組織への高効率分化誘導法を確立し、マウスなどの糖尿病モデル動物を用いて細胞療法の治療効果を確認している。そして、今後の臨床試験実施に向けた準備を進めている。さらに、膵臓移植での使用に向けたヒトiPS細胞からの膵臓臓器の再構築の研究にも着手している。また演者らは、最近、PKCαを介した非古典的経路によってWNT7BがヒトiPS細胞由来膵前駆細胞の増殖を促進する機序を解明し、安定かつ低コストの膵島組織や膵臓臓器の供給に向けて、WNT7Bを用いたヒトiPS細胞由来膵前駆細胞の拡大培養方法の開発も行っている。本発表では、演者らの研究結果をはじめとして、ヒト膵発生分化機構の解明、および、その知見に基づくiPS細胞を用いた1型糖尿病に対する再生医療開発の現状と今後の展望について提示したい。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top