2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s52
【目的】
異種移植において、Galα1,3Galβ1,4GlcNAc(Gal)抗原応答性B細胞はCD5- B-1b細胞フェノタイプを示し、CNI抵抗性である。本研究では、Gal糖鎖抗原応答B-1b細胞の制御を目的として、in vitro / in vivoマウスモデルを用いて検討した。
【方法と結果】
Gal-KOマウスにGal抗原を投与すると、Gal抗原応答性B-1b細胞が活性化され、これらはCNI単剤には抵抗性であった。In vitro B細胞分化誘導モデルで、T細胞非依存性B細胞サブクラス活性化メカニズムを検討した結果、B-1b細胞分化にはTLR-MyD88シグナルが必須であり、Gal糖鎖抗原はB細胞上のTLR-MyD88を刺激する可能性が示唆された。そこで、抗Gal抗体産生抑制効果を検討したところ、MyD88阻害剤の併用投与はCNI単剤に比較し、有意な抑制効果を認めた。この治療戦略を応用し、BCR経路の上流に必須のシグナル分子であるBruton’s tyrosine kinase (BTK)阻害剤と、histone deacetylase(HDAC)阻害剤の併用を試みた。これらの薬剤によるBCR / MyD88の阻害はほぼ完全に血清抗Gal抗体産生を抑制した。
【結語】
BCR / TLR-MyD88の両経路を阻害することで、Gal糖鎖抗原応答B細胞活性を克服し異種移植の実現に繋がる可能性を示した。