移植
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ラット小腸移植モデルにおけるC5a受容体阻害薬の拒絶抑制効果の検討
當山 千巌前田 晃正畠 和典野村 元成渡邊 美穂上野 豪久宮川 周士奥山 宏臣
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s53

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抄録

(背景)補体因子C5aは,補体カスケード時に産生され免疫細胞の炎症反応を促進する.しかし,移植免疫におけるC5aの役割は不明な点が多い.我々はラット小腸移植モデルに対してC5a受容体阻害薬を使用し,拒絶反応ややマクロファージ に及ぼす影響を検討した.

(方法)小腸移植モデルは,ドナーDA,レシピエントLewisで約20cmの回腸を異所性移植した. 薬剤はPMX53(C5aR1阻害薬)を使用し術後腹腔内投与した.まずグラフト生存率を比較し,次に組織学的評価及び細胞機能的評価として,腸管粘膜のHE染色,混合リンパ球試験(MLR,腸管膜リンパ節由来T細胞とドナー脾臓細胞の混合培養)を行った.マクロファージ産生能への効果評価のために,骨髄細胞にG-CSFとPMX53を投与しマクロファージ への分化をFACSで評価した.

(結果)グラフト生存期間は,非投与群に対してPMX53群で延長した(6.6±1.2 vs 13.7±2.3日,n=5,p<0.05).組織学的評価では,移植後6日目のグラフト腸管絨毛の短縮を抑制した.MLRのStimulation Indexは,非投与群に対してPMX53群 で有意に低く(3.07±0.11 vs 2.39±0.20, n=5, p<0.05),細胞増殖を抑制した.マクロファージ 産生能評価は,非投与群に対してPMX53の0.5μM投与群では有意に抑制した(56.5%±6.44 vs 22.5%±2.30, n=4, p<0.05).

(結語)

C5a/C5a受容体シグナルの阻害は,小腸移植免疫で拒絶反応を制御する可能性が示唆された.今後は抑制機序の解析を予定している.

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