移植
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腎移植後長期経過観察患者における血中抗血管内皮抗体測定の意義
佐々木 ひと美三浦 惠二河合 昭浩日下 守竹中 政史白木 良一剣持 敬
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s533

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抄録

緒言:腎移植患者において抗HLA抗有無有無は腎機能予後に影響することが報告されている。一方、抗non-HLA抗体の長期経過観察患者における測定意義や腎生着に関わる報告は少ない。移植後3年以上経過した患者において抗血管内皮抗体を測定し、その後5年間の経過を追った。対象と方法:対象は当院で腎移植後3年以上経過した腎移植患者100名(生体55名、献腎45名)、抗体測定は患者血清を用い、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に対する抗血管内皮抗体をCSP-ELISA法にて測定し、IgG抗体>0.4 ODを陽性とした。抗体陽性群と非陽性群の患者背景、5年後の移植後腎機能につき検討した。

結果:IgG陽性率は12例(12%)であり、一般健康人の陽性率(3%)と比較して高値であった。IgG陽性患者と陰性患者の比較では陽性患者において生体腎移植の割合が高く(10/12, p<0.01)、移植後経過期間が短い傾向が認められた(3192日:4362日, p<0.01)。IgG陽性群の8例、非陽性群の46例に抗HLA抗体スクリーニング検査が行われそれぞれ5例(62.5%)、20例(43.4%)が陽性であった。5年後の腎機能、尿中微量アルブミン尿量の変化率に有意差は認めなかった。

結語:長期経過観察中の腎移植患者の抗血管内内皮抗体陽性率は健常人と比較して高値であった。抗体陽性群は陰性群と比較し移植期間が短く、生体腎移植の割合が高い傾向があったが、抗HLA抗体陽性率や5年後の腎機能に関しては両郡間に有意差を認めなかった。

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