2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s532
はじめに:移植後抗HLA抗体は保険による測定が可能となり、2019年4月から自施設で検査を開始した。今回、腎移植後の抗HLA抗体検査から治療介入までを評価した。
対象:2012年~2020年に施行したpreformed DSA陰性の生体腎移植215例へ、2019年4月~2021年3月に抗HLA抗体スクリーニング検査(Scr検査)を計295回行った。抗HLA抗体(Scr検査)陽性率、抗HLA抗体(抗体特異性同定検査)陽性率(MFI>1000)、DSA陽性率(MFI>1000)、移植腎生検と治療介入について評価した。
結果:腎移植からScr検査までの期間は37.0ヶ月(IQR12.6-61.4)であった。Scr検査は140例へ1回、70例へ2回、5例へ3回施行した。Scr検査陽性は225回(76.3%)に認め、内訳はclass1/2共に陽性103回(34.9%)、class1のみ陽性28回(9.5%)、class2のみ陽性94回(31.9%)であった。Scr検査陽性(225回)に対する抗体特異性同定検査では、抗HLA抗体をclass1/2:34回、class1のみ:26回、class2のみ:74回に認めた。De novo DSAは23例に対して32回(10.8%)検出され、class1/2:1回、class1のみ:3回、class2のみ:28回であった。De novo DSA の32回へ移植腎生検を28回(87.5%)に施行し、13回(40.6%)に拒絶反応を認め、治療介入を行った。
結語:移植腎の組織評価だけではなく抗HLA抗体検査の導入が迅速な診断と早期の治療介入に有用であり、今後、さらなる移植腎予後の向上が期待される。