移植
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在宅でどこまで腎移植患者を支られるか~一地方診療所の経験より~
岡本 雅彦片岡 桂子山﨑 未来神谷 エリカ
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s57

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抄録

腎移植後長期生着例の増加により、移植時には予測不能なフレイルや認知症により要介護状態となる事例も見られる。このような場合移植施設への通院が難しくなり、入院治療にも限界があるため在宅医療も念頭においた医療体制の構築が必要となる。一方移植医療はその専門性や制度面から地域では受け入れられにくいことも否めない。

当施設は常勤医1名の無床診療所で一般外来診療を行う一方、在宅療養支援診療所として難病や末期がん、腎不全など常時180名前後の在宅患者を担当し、年間約80例の在宅看取りを行っており、当地の地域包括ケアシステム(安城モデル)を腎移植患者にも生かす取り組みをしている。在宅においても血中濃度モニタリングによる免疫抑制剤の調整やリハビリテーションによるADLの維持を行い、併存症によっては在宅酸素療法、在宅中心静脈栄養等も用いて非移植患者同様最後まで支えることが可能だが、腎移植患者ではその担い手の確保も問題である。

これまでの経験より、地域で腎移植患者を受け入れていくためには①治療プロトコールの簡素化②移植施設とかかりつけ医の連携③医師、歯科医師、薬剤師のアウトリーチ④介護系サービス事業者や一般市民への移植医療の普及啓発が必要と考える。またCOVID-19時代を迎え、ICTを活用した病診連携や多職種連携、ACP(Advance Care Planning)や地域臨床倫理コンサルテーションの重要性が増しておりこれらについても紹介したい。

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