移植
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当院における肝移植レシピエント、生体ドナー候補者の後方視的検討
佐々木 健吾金井 哲史齋藤 純健松村 宗幸宮澤 恒持柏舘 俊明藤尾 淳戸子台 和哲宮城 重人亀井 尚海野 倫明
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s67

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抄録

背景: 肝移植が救命に必要な状況において、生体ドナーが不在、あるいは脳死下臓器提供の機会がなく、肝移植の治療を受けることができず死亡する症例に遭遇することは少なくない。

方法: 肝移植の機会が得られないことによる死亡を回避するため、2014年から2020年までに当院へ肝移植目的で紹介された患者、および生体肝移植ドナー評価を受けた親族を検討した。

結果: 紹介されたレシピエント候補者は137例。平均年齢41.3±19.2歳、脳死肝移植登録例13例、肝移植例46例(生体46例、脳死0例)。最終転機は肝移植後生存42例(30.7%)、肝移植後死亡5例(3.6%)、肝移植未施行生存18例(13.1%)、肝移植未施行死亡34例(24.8%)、転機不詳35例(25.5%)。肝移植未施行死亡34例における未施行の事由は、脳死待機中死亡11例、生体ドナー不在7例、移植準備中状態悪化14例、移植適応無し2例。

生体ドナー評価を受けた親族は114例。平均年齢40.1±11.9歳。生体ドナー適正例は56例(49.1%)。ドナー不適正の事由は、残肝不足30例(26.3%)、肝機能異常・脂肪肝15例(13.2%)、併存症12例(10.5%)、その他5例(4.3%)。ドナー候補者の年齢が高いほど、ドナー不適正となる率は高く、また、肝機能異常・脂肪肝または併存症を有する率は高い傾向にあった。

結語: 慢性肝疾患患者(特に小児)では、成長による必要肝容量の変化の把握、親族に対する健康指導の実施などにより、生体肝移植の機会喪失を減らすことができる可能性がある。

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