2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s69
【背景】生体移植において、ドナーの健康と安全への最大限の配慮は重要な課題である。今回我々は、当院において生体肝移植ドナーとなった患者における合併症を検討した。
【方法】対象は2006年4月より2019年3月までに当院にて生体肝移植ドナー手術を行った712例。患者背景、手術手技、術後合併症、グラフト所見について検討を行った。
【結果】患者年齢は41.4±11.9歳、手術時間は406±85分、出血量は299±266mlであった。葉切除以上の手術を行った症例は517例であり、ドナー残肝は49.8±14.7%であった。術後、重篤な合併症(Clavien-Dingo Ⅲa以上)をおこした症例は46例(6.5%)であった。詳細は胆汁漏が26例、胸腹水貯留11例、術後遷延する高Bil血症220例などであった。ドナーゼロバイオプシーにて20%以上の脂肪肝を16例(2.2%)に認めた。ゼロバイオプシーにて脂肪肝を認めた症例のうち、肝切後肝不全(PHLF)至った症例は1例のみであった。高Bil血症を呈したドナーのうち3例に脂肪肝を認めたが、高Bil血症を呈した他のドナーと有意差は認めなかった。
【考察】脂肪肝は肝切除のリスクファクターとして知られており、当院では術前CTにおけるL/S比や超音波検査、肝生検によってドナー脂肪肝を同定しているが、それをすり抜けてドナー手術を施行した例が16例あった。手術における手技の向上とともに術前検査においてドナー脂肪肝を見逃さないことがドナー安全に寄与すると考えられた。