移植
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脳死肝移植ドナー受諾基準の拡大
田中 真之長谷川 康尾原 秀明篠田 昌宏北郷 実八木 洋阿部 雄太松原 健太郎山田 洋平堀 周太郎中野 容黒田 達夫北川 雄光
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s71

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抄録

【背景】2010年に臓器移植法が改正され、国内脳死下臓器提供が年々増加しているものの、未だにドナー不足問題は解決していない。脳死肝移植における安全な受諾基準の拡大が目下の課題である。そこで、当施設で経験した受諾基準拡大症例について検討する。

【方法】2013年3月から2021年2月までに当施設で施行した脳死肝移植症例40例を対象として、グラフト機能に関与する脳死ドナーの候補因子(脂肪肝、T-Bil、ドナー年齢、心停止、飲酒、グラフトサイズ、BMI)で最悪条件の症例をマージナル群とし、その他の症例と移植後成績を比較した。

【結果】グラフト肝脂肪沈着30%、摘出前最終T-Bil:5.8mg/dL、ドナー年齢62歳、心停止時間48分、常習飲酒(焼酎2合)、分割肝(GW/BW:1.1)、BMI:45.1kg/㎡を認めた5症例をマージナル群とした。1症例は前者3条件を、1症例は心停止と飲酒の条件を、3症例は年齢、グラフトサイズ、BMIのそれぞれの条件を満たした。レシピエントにおいて、マージナル群でグラフトロスした症例はなく、非マージナル群との比較では入院期間(P=0.637)、全生存期間(P=0.510)に有意差を認めなかった。

【結語】受諾にあたり症例ごとに慎重に検討することは重要であり、現在までに経験した拡大受諾条件は移植後グラフト機能への影響は明らかでなく、許容できると考えられた。

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