移植
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急性肝不全から移植となった患児へのサポート ~CLSの視点から~
米道 宏子伊藤 麻衣阿部 啓子高橋 有希中里 弥生上遠野 雅美平野 加奈子阪本 靖介福田 晃也笠原 群生
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s75

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抄録

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)とは、医療現場において心理社会的サポートを提供する専門職である。アメリカ小児学会はChild Life Programの必要性を明確に提言している。今回、急性肝不全症例の患者サポートに関して必要性・重要性をCLSの視点から報告する。当院へ紹介される小児急性肝不全の患児は転院後にICU管理となる重症症例がほとんどである。通常の移植患者と異なり小児劇症肝炎症例は鎮静管理下・人工呼吸・血漿交換治療を継続し、治療によって自己肝が回復しない場合は緊急肝移植手術が必要となる。そのため移植術前に患児への十分な説明が行えず、患児の理解や受容が欠けた状況の中で患児は術後に覚醒するため、医療的トラウマのリスクが高まる。これらの要因が、長期管理における患児の病識の欠落、内服コンプライアンスの低下の原因となると考えられる。当院の急性肝不全患者に対し、CLSは主に①ティーチング、②プリパレーション/ディストラクション、③治癒的遊び、④復学支援を行う役割を担い、病状や手術への理解促進・医療環境への適応・治療に対する患児の協力・ご両親の治療への理解・積極的介入を引き出すことに成功している。小児急性肝不全以外にも緊急で移植を行わなければならない状況は多い。しかし日本ではCLSの数や認知度が不十分な為、今後、患児と家族へのサービスの影響や効果を識別する研究を行いCLSの重要性を啓発してゆく必要がある。

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