移植
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小児肝移植におけるインフォームド・アセントの現状と課題
小川 絵里青木 光上林 エレーナ幸江園田 真理岡本 竜弥石橋 朋子岡島 英明波多野 悦朗
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s76

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抄録

【はじめに】小児期はインフォームド・コンセントに必要な能力が未熟とされるが,病気を知り治療内容を理解することは重要であり,子どもの基本的人権である.米国小児科学会は,7歳以上をインフォームド・アセントの対象としている.当院の小児肝移植におけるインフォームド・アセントの現状と課題を検討する.

【対象と方法】2011年4月より2021年3月までの18歳未満肝移植181例を認知発達段階に沿って分類した.0−2歳の感覚運動期101例,2-7歳の前操作的思考期35例,7-11歳の具体的操作期22例,11-18歳の形式的操作期22例であり,インフォームド・アセントの現状を後方視的に検証した.

【結果】感覚運動期では,親権者に説明を行い移植医療を決定していた.前操作的思考期では,決定は親権者が行い,看護師から児へプレパレーションが行われていた.具体的操作期では,児へも説明を行い理解を得るよう努めている.形式的操作期では,親権者・児に説明を行い親権者の決定と児の了解を得た.実際に同意書にサインした児は5名であり,術後,実は手術したくなかったと発言した症例が1例あった.

【今後の課題】インフォームド・アセントには,認知発達段階に応じた適切な説明が必要であり,プレパレーションの担い手としてチャイルドライフスペシャリストや子ども療養支援士の充実が急務である.永続的な内服治療を要する移植医療であるからこそ,真に自己決定が行えるよう配慮が必要である.

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