2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s84
【背景】臓器移植後は免疫抑制状態のため発がんの危険が高い。de novo 悪性疾患(DNM)は晩期合併症の一つである。移植医療が確立される中で、DNMの罹患率は上昇すると考えられる。DNMに対するスクリーニング検査(ST)は重要だが、まだ確立していない。【方法】対象は1997年4月から2021年3月まで当院で肝移植術を実施した症例。移植後DNMの症例について検討した。当院肝移植術後のST法は、定期受診時の血液検査、年に1度のCT検査と上部内視鏡検査を基本とした。【結果】27例のDNMについて検討した。内訳はpost-transplant lymphoproliferative disease (PTLD)が7例(25.9%)、肝細胞癌が4例(14.8%)、胃癌、喉頭癌、肺癌、甲状腺癌が2例(7.4%)、腎細胞癌、大腸癌、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、胆管癌、原発不明癌、悪性リンパ腫が1例(3.7%)であった。STで発見された症例が10例(37.0%)、有症状で発見された症例が14例(51.9%)、その他が3例(原発不明癌、腎細胞癌、甲状腺癌)(11.1%)であった。STで発見されたのは肝細胞癌(3例)、肺癌、PTLD、胃癌、喉頭癌、前立腺癌、大腸癌(1例ずつ)で、有症状で発見されたのはPTLD(6例)、肝細胞癌、皮膚癌、乳癌、甲状腺癌、喉頭癌、肺癌、胆管癌、悪性リンパ腫(1例ずつ)であった。発見時、遠隔転移を認めた症例は5例(18.5%)であった。【結論】肝移植後DNMは定期STの実施にもかかわらず発見時に高頻度で遠隔転移を伴っていた。STを再検討する余地があると考えられた。