移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
生体肝移植後の肝静脈流出路障害に対するステント治療の経験
長田 梨比人赤松 延久三原 裕一郎市田 晃彦裵 成寛河口 義邦石沢 武彰金子 順一有田 淳一田村 純人長谷川 潔
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s85

詳細
抄録

【背景】生体肝移植は部分肝グラフトの特性を考慮した肝静脈再建が重要となる。当科では凍結保存静脈グラフトを使用しreservoirとしての機能をもたせ、狭窄、閉塞を防止しているが、流出路障害を発症した場合は主にinterventional radiology (IVR)によって対応し、必要時はステントを留置している。

【対象と方法】1996年1月から2020年10月までの602例の成人生体肝移植症例のうち、肝静脈流出路障害に対してステント留置を行った7例を対象とした。治療前後で、肝静脈圧較差、グラフトの標準肝容積との比、血清アルブミン値の変化を検討した。

【結果】グラフト種別は右肝4例、後区域3例であり、左肝系グラフトの症例はなかった。移植からステント留置までの日数の中央値と範囲(以下同様)は311(16-1229)日であった。2例は初回IVRで留置され、5例は先行するIVR治療歴を有していた。肝静脈圧較差は12.2(10.9-20.4)cmH2Oから3.9(1.4-8.2)cmH2Oへ(p=0.03)、グラフト容積は126.1(67.3-162.7)%から100.1(63.9-128.0)%へ(p=0.02)、血清アルブミン値は3.2(1.7-3.7)g/dlから3.7(2.9-3.9)g/dlへ(p=0.02)、いずれも改善した。施行に伴うClavien-Dindo分類IIIb以上の合併症はなかった。1例で留置後6ヶ月でのステント内血栓に対してIVR下の溶解療法を要した。全例生存しステント開存を維持している。

【結語】肝静脈流出路障害へのステント留置は低侵襲下に十分な治療効果が得られ有用である。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top