移植
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術前脾臓摘出術および部分的脾動脈塞栓術が生体肝移植術に及ぼす影響
長尾 吉泰冨山 貴央森永 哲成利田 賢哉小斎 侑希子冨野 高広栗原 健森田 和豊伊藤 心二原田 昇吉住 朋晴
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s88

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抄録

【はじめに】

生体肝移植術前の脾機能亢進症に対する治療法として、脾臓摘出術および部分的脾動脈塞栓術が、生体肝移植術の術中および術後成績に与える影響について検討した。

【方法】

1997年5月から2019年10月までに当科で施行した生体肝移植術785例のうち、術前に脾臓摘出術を施行された43例(Sp群)と部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行された16例(PSE群)、および生体肝移植術と同時に脾臓摘出術を施行した403例(LT-Sp群)を対象とした。術前因子、術中因子、移植後短期成績について比較検討した。

【結果】

術前因子として、Sp群とPSE群はLT-Sp群に比べ、MELDscoreが低く、(p=0.005)門脈血栓を有する割合が高かった(p=0.01)。術中因子はSp群で、LT-Sp群に比べ手術時間が長い傾向を示した(p=0.01)。術後成績は、PSE群においてSp群やLT-Sp群に比べ、菌血症(p<0.001)・敗血症(p=0.01)を合併する割合が高かったが、1年生存率を含め、その他の術後因子には差がなかった。

【結語】

移植術前より脾臓摘出術やPSEを施行することで、手術時間が延長する傾向を示した。移植後1年生存率に差は無かったが、PSE後の生体肝移植術は術後菌血症および敗血症に陥る割合が多く、周術期における門脈血流量および門脈圧の制御が不十分であった可能性が示唆された。

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