移植
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生体腎移植ドナーの腎機能と透析導入リスクー術後ケアの重要性ー
米田 龍生堀 俊太藤本 清秀
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s95

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抄録

イスタンブール宣言では「生体ドナーによる臓器移植における成功とはレシピエントとドナーの両方が順調な経過をたどることを意味する」として臓器提供後のドナーのケアの必要性を謳っている。本邦の移植関連学会の生体腎移植ドナーの集計では2009~2018年に2名の透析導入症例が示されている。一方、日本透析医学会の2019年末の集計では腎提供後の透析患者は181名であり。腎提供時期が導入後である等一部誤解された可能性はあるものの大きな差がある。前者は2009年からの前向き調査で、後者は後ろ向き調査であるという違いが一因となっているものの、ドナーの登録に関しては、不明、未入力のものが多く、適正なケアが出来ていないドナーが多いことも大きな問題と言える。

腎移植ドナーの提供後の腎機能は、術前の60~70%となり、慢性腎臓病のstage3(eGFR<60mL/min/1.73m2)となる症例が多い。術前評価をクリアした健康体のドナーは一般人口と比較して生命予後や透析導入のリスクは上がらないとされてきたが、観察期間を延ばし、背景を揃えるとドナーは透析導入や全死亡、心血管系死亡は非常に低い割合ではあるいがコントロールに比べて高いという報告が出てきている。

この透析導入や死亡のリスクの影響因子には、喫煙や肥満、高アルブミン尿症やeGFR低下、高血圧、糖尿病など術後の管理が重要となるものが多く、腎移植ドナーに対する腎臓内科医の管理を含めた包括的なケアが重要となる。

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