移植
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名古屋第二赤十字病院における生体腎移植ドナーの腎採取後の腎機能と予後
平光 高久二村 健太友杉 俊英岡田 学後藤 憲彦一森 敏弘鳴海 俊治渡井 至彦
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s99

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抄録

はじめに

本邦では生体腎移植術が腎移植術の大部分を占めている。生体腎移植において、最も大切なことは生体腎移植ドナーの将来的な腎予後である。生体腎移植ドナーの腎提供後の腎機能、透析導入リスク、生命予後について検討した。

方法

2008年1月から2018年12月までに生体腎移植術のために腎採取術を受けた生体腎移植ドナーのうち、805例を対象として検討を行った。生体腎移植ドナーを年齢層別に30-49才、50-69才、70-89才に分けて背景因子、baseline biopsy結果、eGFR、透析導入率、生命予後について検討を行った。

結果

患者背景では、年齢層が高くなるに従って、術前合併症(高血圧、脂質代謝異常、耐糖能異常)が多くなり、血圧、LDL cholesterol、triglyceride、空腹時血糖などのデータも悪化を認めた。Linear mixed model analysisによりeGFRを検討すると、30-49才>50-69才>70-89才の順に有意にeGFRが低く推移することが示された。さらに、baseline biopsyにおいても30-49才<50-69才<70-89才の順に、IF/TA、細動脈硬化病変、荒廃糸球体病変などの所見を有意に多く認めた。透析導入例は認められなかった。生命予後に関しては、観察期間内に生体腎移植ドナー11人の死亡を認めたが、Kaplan-Meierで検討すると年齢層間で有意差を認めなかった。

結語

生体腎移植ドナーの腎採取後のeGFRは年齢が高くなるに従って、低い値で推移するが、透析導入、生命予後には影響を与えないと考えられた。

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