移植
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生体腎移植ドナーの長期生命予後と腎機能推移の検討
堀田 記世彦大澤 崇宏横田 勲稲尾 翼田邉 起岩原 直也篠原 信雄
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s98

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抄録

【背景】生体腎移植ドナーは、近年の報告においてCKDリスクの増加とともに長期的には生命予後に悪影響を与える可能性も指摘されている。【対象】1965年から2015年までに腎提供が行われた299例中、追跡可能であった230症例を対象とし、生存率と術後の腎機能推移について検討した。また、当コホートと年齢と性別で調整した一般人の生存率を厚生労働省から出されているデータより算出し、比較検討した。【結果】提供時年齢は中央値54歳(26-78)、性別は女性154、男性76例、観察期間の中央値11年(1-41)であった。死亡例が15例で、死因は悪性腫瘍9例、急性心筋梗塞2例、自殺1例、誤嚥性肺炎1例、消化管穿孔1例、腎不全1例であった。10年、20年、30年全生存率はそれぞれ95.3%、90.7%、80.9%であり、年齢、性別を調整した一般人の生存率と同等であった。次に術後の腎機能の推移について186症例で検討した。全例術前のeGFRは60ml/min以上であったが、術後38例がCKDステージ3b以上(eGFR45ml/min未満)となり、このうち2例で術後それぞれ24年、26年目に透析導入となった。一方で、この術後eGFR45未満となった症例とeGFR45ml/min以上の症例の生存率は同等であった。【結語】腎移植ドナーと一般人との比較では長期生存率は同等であった。また、CKDステージ3b以上の腎機能低下となる症例を認めるものの、術後の腎機能は生存率に影響を与えなかった。

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