移植
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SARS-CoV-2ワクチン接種後の細胞性免疫と液性免疫の変化からこれからの臓器移植を考える
富田 祐介滝口 進也上原 咲恵子中村 道郎
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s144_2

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抄録

移植患者は終生にわたる免疫抑制剤の内服が必須であり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症のハイリスク群に属する。今回、腎移植レシピエントに対するmRNA SARS-CoV-2ワクチン療法の安全性、有効性について宿主における免疫学的変化の側面から検討し、将来の臓器移植のあり方について考察した。初めに体調管理表を集計し、安全性について健常者と比較したところ注射部の局所症状、全身症状ともに副反応の頻度が低いことが示された(P<.001)。特に発熱の頻度は低く、宿主内の免疫反応が抑制されていることを示唆する結果であった。次に血清中の抗体陽性率、抗体価を測定した。健常者、透析患者のS-RBDに対するIgG抗体の陽性率は100%であったのに対し、腎移植レシピエントでは26.6%と有意に低値であり(P<.001)、移植後のワクチン接種における液性免疫応答は乏しいことが示された。最後に細胞性免疫応答についてワクチンの接種前後に採取した全血から末梢血単核球を分離し、フローサイトメトリーで解析した。接種後、健常者で活性化T細胞が増加傾向を示し (P<0.01)、特にDR+CD8+ T cells (P=.042), PD1+CD8+ T cells (P=.027)が顕著であった。一方で、腎移植レシピエントはワクチンの接種による末梢血単核球の影響は少なかった。この期間を通して拒絶反応は一例も認めず、安全性は高いことが示された。以上の結果より、移植後のレシピエントの宿主免疫は制御されており、少なくとも移植前の段階でmRNA SARS-CoV-2ワクチンの接種を終え、抗体を獲得しておくことが必須であると考えられた。

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