移植
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移植用臓器搬送時の凍結損傷を防止するための梱包方法の検討
栗原 啓剣持 敬伊藤 泰平會田 直弘江川 裕人日下 守
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s147_2

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抄録

[背景]

通常の冷凍庫は-20℃に設定されており、臓器周囲の氷の直接接触によってUW液が氷結、臓器が凍結損傷を受ける可能性があることには留意しなくてはならない。実際に搬送時の低温暴露によりグラフト肝が凍結損傷を起こした報告がある。そのため、2021年7月に日本移植学会から臓器凍結損傷予防のための臓器搬送のパッキング標準プロトコールが公開された。その科学的妥当性について検証を行った。

[方法]

ウシ肝臓をUW液に浸漬、3重梱包のみでパッキングした群(対照群)と日本移植学会の標準プロトコール(3重梱包2層目へ乳酸リンゲル液1000ml充填)でパッキングを行った群(標準パッケージ群)の2群で冷保存を行った。パッキングされた臓器周囲は-20℃と-80℃の氷を使用し、グラフト表面温度、組織学的評価を行った。

[結果]

-80℃の氷では対照群と標準パッケージ群ともに臓器表面は-0.7℃以下となり、UW液と臓器は肉眼的に氷結した。一方-20℃の場合、対照群では臓器の肉眼的氷結と組織学的変化を認めたが、標準パッケージ群ではUW液の温度は氷点の-0.7℃を下回ることなくUW液、乳酸リンゲル液、臓器表面のいずれにも氷結は認められなかった。病理組織学的にも正常構造を保ち良好な保存状態が維持できた。

[結語]

日本移植学会のパッキング標準プロトコールを用いることにより、UW液、搬送臓器の氷結が予防され、安全な移植医療の提供に寄与できるものと考える。

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