移植
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臓器移植後の妊娠および授乳中の薬剤使用に関する最新情報と今後の課題
肥沼 幸村島 温子笠原 群生
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s152_1

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抄録

臓器移植後の患者は多くの免疫抑制薬での治療を要し、一部の薬剤は、ほぼ生涯にわかって継続することになる。また、様々な合併症に対し、薬剤での治療を要する。これまでに、海外の臓器移植後妊娠レジストリーから、多くの妊娠出産例が報告されており、その中で様々な免疫抑制薬の妊娠中使用における安全性についても検討されてきた。本邦では承認以来、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)、アザチオプリンは妊婦禁忌とされていたが、これまでに蓄積してきた安全性情報に基づき、妊娠中であっても治療の有益性を考慮して使用するよう、2018年に添付文書記載が変更された。今回のガイドラインでは、免疫抑制薬だけではなく、降圧薬、抗菌薬のような合併症治療薬についても、妊娠中使用における注意点や安全性情報について解説した。また、近年、多くの薬剤で母乳移行量を測定して非常に少なかったとする報告や母乳哺育中の乳児に有害事象は見られなかったとする研究報告がなされている。これまでは臓器移植後の出産例に対し、免疫抑制薬の使用を理由に断乳を指示されることが多かったが、免疫抑制薬についても、母乳哺育と両立できる可能性があることが分かってきた。しかし、いまだ情報が十分ではない薬剤も多く、新しい治療薬も開発導入されている。それらの薬剤について、妊娠・授乳中使用での安全性評価を目的とした研究をすすめていくことが今後の課題である。今回、肝移植後妊娠管理を行った自験例の情報も含め、妊娠・授乳中の薬剤使用に関する最新の情報を提示する。

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