2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s154_1
米国Transplant Pregnancy Registry International Annual Report 2018では、臓器移植後妊娠した全レシピエント数1699人,妊娠3092回のうち、肺移植後レシピエント数38人(2.2%)、妊娠49回(1.6%)と報告されている。49妊娠中、生出産62%、流産26%、死産1%、人工妊娠中絶10%、計画外妊娠58%であった。
肺移植後レシピエントの妊娠・出産は、早産(50%前後、通常10%前後)、低出生体重児(50%前後、通常4-7%)、妊娠中の拒絶反応(10-15%)、移植肺喪失、母体死が高率に招来される極めて危険性が高いものである。さらに、妊娠・出産を乗り切った後、比較的子が小さいうちに25~40%の母親が死亡している。
これらのリスクをレシピエントとご家族がよく理解した上で、妊娠・出産を希望する場合、evidence levelの高いデータはないものの、必要な条件を以下のように設定した。移植後少なくとも2年、可能であれば3年経過していること、一定期間拒絶反応がなく、慢性拒絶反応が進行している所見がないこと、移植臓器機能が安定し、直近の感染あるいは慢性感染が持続している所見がないこと、免疫抑制療法が安定した投与量で維持されており、流産や先天異常のリスクを増大させる免疫抑制剤が十分な期間休薬され、併存症がコントロールされており全身状態が良好であること、そして患者本人と家族が妊娠に伴う母体と児の危険性をよく認識していること、である。
肺移植後の妊娠例の報告で特筆すべきは計画外妊娠が多いことである。妊娠に伴う母体・児の予測される危険性、避妊法、家族計画に関する患者・家族への情報提供・教育・カウンセリングがきわめて重要とされる。