2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s157_1
臓器移植後の免疫抑制療法では、感染に対する生体防御能を保ちつつ、同種異系 (アロ) 免疫応答を抑制することが望まれる。生体防御を司る免疫機構は、免疫担当細胞に発現する機能分子の遺伝子多型が、感染性微生物やアロ抗原に対する免疫応答に異なる影響を及ぼす可能性がある。本研究では、臓器移植後の特殊な病態で有意となる免疫関連のゲノム情報から術後DSA出現に関連する遺伝子多型(SNP)を抽出し、免疫モニタリング等による免疫監視に基づく個別化免疫抑制療法への可能性について検討した。
これまでに移植関連で既に報告されている獲得免疫および自然免疫に関連する35のSNPsを候補遺伝子として、肝移植126例・腎移植98例のレシピエントDNAを用い解析した。臨床イベント予測モデルは、候補遺伝子のSNPsと拒絶反応、de novo DSA陽転、との関連解析を実施した。肝移植および腎移植各々で複数のSNPの組み合わせをMultifactor dimensionality reduction(MDR)解析しリスクモデルの選定を行った。臓器移植後の拒絶反応およびDSA出現につながる免疫学的イベントに即した遺伝学的個体差によって、術後の個別化免疫抑制療法の最適化およびDSA出現に対する予防戦略につながる可能性について報告する。