移植
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Rituximabを中心とした全臓器への抗体治療戦略
中川 健
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s157_2

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抄録

 免疫抑制剤の進歩とともに臓器移植の成績は格段に向上してきたと言えるが、一方で残された課題も明らかになってきた。ドナー不足からも生体ドナー移植が中心となっている本邦において、抗ドナー抗体(DSA)陽性患者への移植や血液型不適合移植を可能にすることは臓器不全患者の移植医療において大きな意味を持つ。また、抗HLA抗体出現による生着率の著しい低下が明らかになり、抗体型拒絶反応治療の重要性も言われてきた。

 抗CD20モノクローナル抗体のRituximabはB細胞性非ホジンキンリンパ腫の治療薬として開発されたが、B細胞への反応から抗体型免疫反応に対する抑制効果は明らかであり臓器移植領域での有効性が報告されてきた。日本移植学会では1)ABO血液型不適合移植における脱感作、2)DSA陽性レシピエントにおける脱感作、3)抗体関連型拒絶反応治療に対するRituximabでの治療を医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬の要望として第2回検討会議に提出した。先行した1)は2016年に承認され、現在、2)、3)に対する承認にに向けた取組みを行なっている。医薬品医療機器総合機構と協議し、2016年から全臓器への実態調査を行い、2019年に腎移植における治験を開始した。腎以外の臓器移植ではAMED江川斑の研究として一次調査に引続き、個別症例に対する二次調査を行なった。同時に、高容量IVIG治療、抗体検査、抗体型拒絶反応治療に対する血漿交換治療の申請を行ない抗体治療の完成を目指してきた。これらの過程を説明するとともにこれまで得られたRituximabの成績を紹介する。

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