移植
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iPS細胞を用いた難治性腎、膵、肝疾患に対する再生医療の開発
長船 健二
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s160_1

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抄録

無限の増殖能と全身の細胞種への多分化能を有するiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)から作製された細胞や組織の移植によって臓器機能の回復を図る再生医療の臨床試験が複数の疾患において開始されている。他の臓器と比べ遅れをとっていたが、近年、腎、膵、肝臓領域においてもiPS細胞を用いた再生医学研究が著しく進捗した。演者らも3つの臓器の発生過程を再現し、ヒトiPS細胞から胎生期の腎前駆細胞であるネフロン前駆細胞と尿管芽細胞への独自の高効率分化誘導法とそれらの前駆細胞を用いた腎組織の作製法、さらに、膵島様組織や肝組織、胆管組織の作製法の開発にも成功した。現在、ヒトサイズの臓器としての腎、膵、肝臓の作製法と再生臓器移植の開発に向けて研究を進めている。さらに、移植用臓器の作製に加え、マウスおよびサル、ブタなどを用いた腎疾患、糖尿病、肝硬変の疾患モデルを開発し、ヒトiPS細胞由来腎前駆細胞、膵島様組織、肝細胞を用いた細胞療法の薬効や安全性の検討を行っている。今後数年内のヒトiPS細胞を用いた慢性腎臓病(CKD)、1型糖尿病、肝硬変に対する細胞療法の臨床試験開始に向けて準備を進めている。本発表では、iPS細胞を用いた再生医療全般と演者らの細胞療法と臓器再生など移植治療に向けてのiPS細胞を用いた腎、膵、肝臓再生研究の現状と今後の展望について述べてみたい。

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