移植
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事例からの教訓〜血液型不適合腎移植後における大量出血時のFFP選択「安全な適合輸血あるいは移植腎保護のため不適合輸血のジレンマ」
野島 道生川喜田 睦司峯 佑太原 重雄山田 祐介長池 紋子兼松 明弘山本 新吾
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s159_1

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抄録

我々は血液型不適合生体腎移植(ドナーA型レシピエントO型)の14年後に急性大動脈解離を発症し緊急手術を実施、同日O型FFP30単位を輸血、救命されたものの無尿となり移植腎機能を喪失した症例を経験した。血液型抗体による抗体関連拒絶反応(AMR)を疑い2日目に移植腎生検を実施、AMRの診断であった。

血液型不適合移植前の脱感作および手術ではAB型など抗体を含まないFFP輸血を標準としているが、実臨床では異型FFP輸血に起因するアナフィラキシーが知られており、経験している施設も少なくない。

この事例は「血液型不適合の患者が移植後の遠隔期に大量FFP輸血を要する場合にどうすべきか」の実例であると痛感した(レシピエントにとって安全な適合輸血あるいは移植腎保護のために不適合輸血の選択を迫られる)。結論を導くのが難しいからこそ「血液型不適合腎移植のガイドライン」にも明記されていないのであろうと推察し、それでも何とかなっているのは腎移植患者が大量にFFPを必要とすることが稀であるためではないかと思われた。

増加している血液型不適合移植患者がかかりつけ移植施設以外で治療を受けることも考えられる。今回の貴重な経験から、移植医あるいは移植学会から救命治療を担当する救急医・血管外科医等にこのジレンマを情報発信し、問題意識を共有することが生命予後だけでなく可能であれば移植腎も維持するための方策につながると考えられた。

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