移植
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ヒト臓器創生への挑戦
小林 英司
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s161_2

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抄録

 近年のヒトES細胞やiPS細胞などの幹細胞の発見を受けて、多能性幹細胞によるヒトの臓器形成研究が進み自己複製能力および分化能力の観点から、3次元培養で作られるオルガノイド技術が注目されている。しかし、現在のところ小型の細胞集合体は完全な臓器には展開できない。一方、ヒトへの移植に適するように遺伝子改変されたブタが再注目されているが、レシピエントへの過剰免疫抑制が課題である。本講演では、現在行っている臓器移植と再生・置換技術の3つのクロストーク的アプローチを紹介する。①オルガノイド技術と生体適合手術の癒合:これまでブタ等の臓器を界面活性剤で生細胞を洗い流し、血管付きで残った細胞外マトリックスを利用して血管付き臓器を作ろうとする研究手法があったが、In Vitroでの細胞充填に課題を残す。演者らは、患者が持つ他の腸管(大腸)を小腸化するという新しい外科的手技を開発した。小腸オルガノイドを植えた大腸グラフトを同所である終末回腸に置換することで脂肪吸収能を持ち、しかも大腸の蠕動を持ったハイブリット腸管を開発した。②ブタ胎仔臓器をヒト臓器の再生の場として使う技術:ブタの発生途中の臓器は、ヒトへの移植において免疫反応を制御しやすい。またブタ胎仔腎臓にヒト腎臓前駆細胞を注入するとキメラ腎臓が発育する。ブタ組織をコンデショナル・アブレーションし、ヒト化率を高めるアプローチである。③常温機械還流装置と臓器再生の癒合:障害を受けた肝臓をEx Vivoで機械還流培養し再生を試みるアプローチである。現在ブタモデルにてマージナル肝臓を用いて長期に還流培養する装置開発に乗り出している。

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