2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s162_1
血糖コントロールが不安定な1型糖尿病(T1D)に対しては、死体ドナーからの同種膵臓移植および膵島移植が行われている。特に膵島移植はより低侵襲な治療として期待されている。
しかし、ドナーの不足が問題である。そのために、ヒト膵島以外の細胞ソースが探求されている。有名なものにヒトES・iPS細胞からのβ細胞作製があるが、それ以外に近年注目されている細胞源として医療用ブタからのブタ膵島の利用があげられる。ブタ膵島移植についてはすでに、海外で臨床試験が行われている。医療用のDesignated Pathogen Free (DPF)ブタから摘出した膵臓から、膵島を分離し、マイクロカプセルに封入して移植することで、HbA1cを7%以下に維持しながらも無自覚低血糖数の改善が示されている(1)。さらに、最近発展している遺伝子編集技術を用いることで、よりヒトに対する適合性を高めた膵臓を持つブタを以前に比べて容易に作成することができるため、異種移植の分野の研究が活発化している。
また自家移植以外の移植医療のもうひとつの課題である長期にわたる免疫抑制剤を軽減する研究もおこなわれている。前述の免疫隔離能をもつカプセルを用いる方法が有望であるが、これと異種膵島移植を組み合わせた研究が進んでいる。我々も近い将来の異種膵島移植の臨床試験を目指して準備を進めている。
Matsumoto S, et al. Clinical Benefit of Islet Xenotransplantation for the Treatment of Type 1 Diabetes. EBioMedicine. 2016 Oct;12:255-262.