移植
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肝移植における内科医の役割
上田 佳秀
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s190_1

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抄録

肝移植後患者の長期予後の改善のためには、外科医のみならず内科医を含む各専門医ならびに他の医療スタッフがチームとして患者診療にあたることが不可欠である。今回、以下の2点から日本の肝移植患者診療における内科医の役割と今後の移植内科医育成方法について考察する。(1)日本の肝移植におけるチーム医療の実際: 肝移植適応となる肝不全患者診療は肝臓内科医が行っており、適切な時期に適応を判断して外科医に紹介し、肝移植に向けて治療を継続する必要がある。この部分は、広く肝臓内科医が持つべき知識・経験であり、現在肝臓学会ホームページに情報を公開し啓蒙活動を行っている。一方、肝移植後の原疾患再発対策、免疫抑制療法、生活習慣病治療などについては、専門知識を持つ肝臓移植専門内科医が必要であり、今後の積極的な育成が必要である。(2)米国におけるTransplant Hepatologistとの比較:米国ではTransplant Hepatologistという職種が定着しており、移植患者の診療に内科医が中心的な役割を果たしている。一方で、日本では肝移植患者のみを診療する内科医はほとんどいない。この相違を生み出している原因は何か、米国のシステムを日本に取り入れるべきか、についてMayo Clinic Floridaの移植現場の視察経験から考察する。現時点では、米国の移植医療から学ぶべきものはあるものの、日本にそのまま取り入れるには多くの問題があると考える。肝移植前後には内科医の関与が重要であることは明白であり、日本における最適な内科医の関与方法や肝臓移植専門内科医の育成方法を検討する必要性がある。

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