2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s196_1
【はじめに】生体肝移植術前に門脈血栓症を有する症例では,門脈再建に難渋することがある.今回われわれが施行した術前門脈完全閉塞例に対する門脈吻合方法の工夫について報告する.
【症例】患者は50歳代男性,C型肝炎による非代償性肝硬変および肝細胞癌・脾動脈瘤と診断され,生体肝移植を予定した.門脈血栓による完全閉塞を認め,血栓摘除の危険性が高いと判断し,上腸間膜静脈から移植片門脈へのバイパスを計画した.肝授動後に回結腸静脈から左腋窩静脈への体外循環を行った.膵下縁でSMV前面を露出したが,側副血行路発達や組織の硬化のため,全周性の剥離は困難と判断し,サイドクランプで吻合する方針とした.右大腿静脈を採取し,SMVと端側吻合した.グラフト長が不十分であったため,大腿静脈末梢を形成して延長した.レシピエント肝全摘を行い,プットインして肝静脈および門脈を再建して再灌流した.間置グラフトを用いた門脈の血流は良好であった.また,長期経過後も血流良好である.
【まとめ】大腿静脈グラフトはグラフト長の面から,生体肝移植における血行再建に有用であると考えられた.