移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
門脈血栓・完全閉塞に対して大腿静脈を間置グラフトとしてバイパスした生体肝移植の一例
長谷川 康尾原 秀明松原 健太郎阿部 雄太北郷 実八木 洋山田 洋平堀 周太朗田中 真之中野 容黒田 達夫北川 雄光
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s196_1

詳細
抄録

【はじめに】生体肝移植術前に門脈血栓症を有する症例では,門脈再建に難渋することがある.今回われわれが施行した術前門脈完全閉塞例に対する門脈吻合方法の工夫について報告する.

【症例】患者は50歳代男性,C型肝炎による非代償性肝硬変および肝細胞癌・脾動脈瘤と診断され,生体肝移植を予定した.門脈血栓による完全閉塞を認め,血栓摘除の危険性が高いと判断し,上腸間膜静脈から移植片門脈へのバイパスを計画した.肝授動後に回結腸静脈から左腋窩静脈への体外循環を行った.膵下縁でSMV前面を露出したが,側副血行路発達や組織の硬化のため,全周性の剥離は困難と判断し,サイドクランプで吻合する方針とした.右大腿静脈を採取し,SMVと端側吻合した.グラフト長が不十分であったため,大腿静脈末梢を形成して延長した.レシピエント肝全摘を行い,プットインして肝静脈および門脈を再建して再灌流した.間置グラフトを用いた門脈の血流は良好であった.また,長期経過後も血流良好である.

【まとめ】大腿静脈グラフトはグラフト長の面から,生体肝移植における血行再建に有用であると考えられた.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top