移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
心臓移植待機の長期化によるLVAD関連合併症にともなう問題点の検討
吉岡 大輔川村 匡斎藤 哲也河村 拓史松浦 良平三隅 祐輔島村 和男坂田 泰史戸田 宏一宮川 繁
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s198_1

詳細
抄録

左室補助人工心臓(LVAD)治療成績の向上に伴い、心臓移植待機患者数はさらに増加し、結果的にドナー不足および移植待機期間の著明な延長を引き起こすことになった。2022年の時点で心臓移植患者の平均待期期間は5年近くとなり、7年以上に達するとも想定される。結果的に、LVAD装着により非常に安定した患者のみが心臓移植に到達し、移植以外に治療が困難な症例に関しては救命困難な状態となっている。

LVAD装着患者の移植待機の長期化によるLVAD関連合併症として問題となりうるのは、現時点では①難治性右心不全②LVAD関連感染症③遅発性大動脈弁閉鎖不全症(AR)などが挙げられる。①について、当院ではLVAD装着後3か月以上の右心補助を必要とした両心不全が10例あり、6例が平均659(109-1245)日で心臓移植に到達できたが、4例を平均505日で失った。②255例のLVAD中、現在までに32例のLVADポンプ感染症を認め、LVAD装着から発症日までの中央値は390日であった。充分なドレナージ療法ののちに14例でポンプ交換を施行し、ポンプ感染後の2年生存率は61%となっている。③現在までに術後慢性期に遅発性ARによる心不全に対して12例に再開胸大動脈弁閉鎖術を施行した。全例生存退院が可能であり、術後3年生存率は83%と良好である。

LVAD長期化に伴い、LVAD関連合併症がさらに多く発生することが懸念される。難治性右心不全に関しては治療介入が非常に困難であり、マージナルドナーでの早期移植以外に救命が困難であるが、感染症や遅発性ARに関しては手術介入によりさらに長期待機が可能になる症例もあると考えられた。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top