移植
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「長期待機はどのような問題点を引き起こすか?」国立循環器病研究センターの場合
瀬口 理米山 将太郎羽田 佑望月 宏樹渡邉 琢也甲斐沼 尚福嶌 五月藤田 知之塚本 泰正
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s198_2

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抄録

長期待機は本邦心臓移植の最大の課題である。1999年に実施された国内第1例目の心臓移植以降、移植待機期間は長期化し、2010年のStatus 1平均待機期間は915日を数えるようになった。そのため、患者のみならず、我々心臓移植に関わる医療者も2010年の臓器移植法改正に大きな期待をかけ、その施行を心待ちにしてきた。実際臓器移植法改正によりその後の国内心臓移植数は増加し、2019年には84例の心臓移植が行われたが、心臓移植希望登録者の増加もあり、待機期間の長期化には歯止めがかからず、2021年の平均移植待機期間は1718日と更なる長期化を示している。

国立循環器病研究センターにおいても全国的に待機期間が上昇傾向を示す2016年以降とそれ以前を比較するとStatus 1平均待機期間は891日から1306日に長期化していた。そのような状況のなか、2011年の植込型補助人工心臓の保険償還は多くの心臓移植待機患者の生活の質を高く保ち安全に待機することを可能としたが、その一方で待機期間中の様々な合併症などの医学的問題や、ケアギバーを含む社会的問題の増加は待機期間の長期化と無関係ではなく、iLVADの適応とならない患者については5年を超える待機期間を病院で過ごすことも珍しくない。

本シンポジウムでは心臓移植待機の長期化により患者ならびに移植施設が直面する様々な課題について当院での経験に基づき報告する。

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