移植
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膵臓移植手術手技における工夫
平光 高久二村 健太岡田 学後藤 憲彦一森 敏弘鳴海 俊治渡井 至彦
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s207_1

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抄録

膵移植では、周術期になんらかの合併症をおよそ60%で認めている。特にgraft lossに直結するような重症合併症も、およそ30%で認められている。そのような状況の中で、いかに合併症を予防するかがgraft lossを避けるために大切になってくる。これまでの報告で膵臓のCITが長くなると合併症のリスクが高くなることが報告されており、当院では、膵臓のCITを短くするために、bench surgeryでリガシュアーを使用することによりbench surgeryの時間を短縮し、さらに膵臓を先行して移植している。これにより膵臓の血流再開までの時間が短縮でき、膵臓の血流再開時の出血も減らすことが可能である。さらに、移植十二指腸をbench surgeryで処理せず長めに残しておくことで、膵血流再開後、産生された膵液を長めに残した移植十二指腸内にドレナージすることで十二指腸が緊満することを防ぎ、出血を予防し、さらには膵臓からの出血を良好な視野のもとで止血できるため出血量を減らすことが可能である。また、移植十二指腸を血流良好な部分で切除することができ、移植十二指腸断端からのleakageを予防することも可能である。門脈血栓対策として、レシピエントの外腸骨静脈を外腸骨動脈の外側にスイングしてから門脈と吻合しており、これにより現在までのところ、門脈血栓でgraft lossとなった症例は認めていない。以上、膵臓移植の手術手技について検討する。

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