移植
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当院におけるこれまでの膵臓移植の手術手技の工夫
富丸 慶人小林 省吾伊藤 壽記佐々木 一樹岩上 佳史山田 大作野田 剛広高橋 秀典土岐 祐一郎江口 英利
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s207_2

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抄録

膵臓移植は1型糖尿病に対する確立された根治療法である.当院では2022年3月末までに61例の膵臓移植を行っており,今回,膵臓移植手術におけるこれまでの我々の手術手技の工夫を報告する.

【Bench Surgery】

①グラフト膵臓周囲組織のトリミング:Vessel sealing deviceを用いて行い,手術時間の短縮に努める.

②動脈再建:上腸間膜動脈から保存液を流した際に胃十二指腸動脈断端からのバックフローが十分でない場合には,ドナーの腸骨動脈や空腸動脈などを動脈グラフト(Iグラフト)として間置する形で総肝動脈と胃十二指腸動脈を吻合する.

③リークテスト:Bench surgeryの最後に,インジゴカルミンを含んだ保存液によるグラフトの灌流を行う.保存液が可視化されることで,未処理の血管の検索が容易となる.

【レシピエント手術】

①腸骨動静脈の剥離・配置:レシピエントの腸骨動静脈を,必要に応じて分枝を処理しつつ周囲組織から十分に剥離し,腸骨静脈が外側,腸骨動脈を内側に位置するようにし,その位置で血管吻合を行う.これにより,グラフト門脈および静脈吻合部位が腸骨動脈に圧排されないような配置が可能となる.

②グラフト十二指腸減圧チューブ:グラフト十二指腸と吻合する挙上回腸より,グラフト十二指腸内に先端を置く形でチューブを留置し,グラフト十二指腸内の減圧を行う.

現在,これら症例を集積し,各々の手術手技の工夫の結果を評価しており,この結果に基づき今後の継続の可否を検討する予定である.

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