移植
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多次移植としての膵移植における問題点と工夫
栗原 啓剣持 敬伊藤 泰平會田 直弘
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s209_1

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抄録

膵移植は血栓症に代表される合併症も多く拒絶後の生着率も不良である。膵グラフト摘出・廃絶となった症例は2回目の膵臓移植および膵腎同時移植(SPK)を希望されることも多く当科において80例の膵移植を行ったうち12例が膵臓の多次移植症例であった。当科における多次移植の問題点と工夫について述べると共に、多次移植の移植成績について検討する。

移植時の問題点として移植床、吻合血管の確保がある。当科では移植前に造影3D-CTで血管系を評価し吻合可能部位を設定している。しかし手術では吻合血管の強固な癒着や血管の狭小化を認めることが多く、下腹部正中切開で開始し腹腔内から吻合可能な血管長を確保している。吻合血管長はほとんどの例で非常に短く、可動性が確保できないことからintraluminal technique吻合することが多い。一次移植のグラフトは移植床が確保できれば原則触っていない。また多次移植の場合は、既存抗体陽性例が多く免疫学的high riskであるが導入療法としてATGやIVIGを使用している。

多次移植12例のうち腎移植後SPK8例、膵移植後SPK4例であった。11例は右腸骨窩に膵移植し、1例は左腸骨窩に膵・腎を移植した。1年患者生存率は初回移植94.1% vs多次移植91.7%(P=0.59)、1年膵グラフト生着率は初回移植91.7% vs多次移植89.7%(P=0.28)であり両群に差を認めなかった。

多次膵移植は難易度が非常に高いが成績も比較的良好であり、1次膵グラフト廃絶後の治療選択の一つになり得ると考えられる。

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