移植
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肺グラフト評価法と保存法のトランスレーショナルリサーチ
渡辺 有為村井 翔上田 和典渡邉 龍秋新井川 弘道大石 久鈴木 隆哉平間 崇宇井 雅博小野寺 賢野津田 泰嗣野田 雅史岡田 克典
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s212_1

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抄録

肺グラフト評価法:ドナー肺の性状は全ての肺葉で一様ではなく,移植に不適応と判断されたドナー肺でも,肺葉によっては良好な機能を維持し移植可能であることがある.大柄なドナーの肺葉を用いて小柄なレシピエント,特に小児への肺葉移植数が増加すれば,待機中死亡率を減少させることができる.われわれは50kgの大型の家畜ブタの左上葉または左下葉を,30kgの小型の家畜ブタの左肺として移植するモデルを確立し,肺葉ごとのグラフト評価法を検索している.

肺グラフト保存法:臓器保存の究極の目標は,細胞の代謝を極力抑え,代謝停止に近い状態にすることである.哺乳類の仲間であるリスやクマなどは,冬眠という能動的な低代謝状態に入ることで基礎代謝を平常時の 1-25%にまで低下させ,エネルギー消費を節約することで冬期や飢餓を乗り越える.通常では個体が死に至るような低代謝状態になりながらも,冬眠から目覚めると再び通常の活動を始めることから,冬眠は可逆的な変化といえる.最近,このような可逆的な低代謝状態を,細胞レベルで薬理学的に導入可能なことが明らかになった.低代謝状態を固形臓器に安全に導入できれば,現在では難しい移植臓器の長期保存を実現できる可能性がある.われわれは肺保存液へ冬眠導入薬剤を加えることで保存時間を延長できないか,さらにはEx Vivo Lung Perfusion(EVLP)の灌流液へ冬眠導入薬剤を加えることで灌流時間を延長できないかを検討している.また長時間の灌流に適したEVLPの開発も併せて行なっている.

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