移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
米国における肝細胞癌患者への移植基準と移植格差
Nagai ShunjiMiyake KatsunoriAbouljoud Marwan S
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s213_1

詳細
抄録

背景: 米国では移植機会の公平性を保つため、肝細胞癌(HCC)患者はMilan基準を満たすことが待機優先(MELD exception)を得る条件である。2019年にNational Liver Review Board(NLRB)が導入されMELD exceptionの適否をより厳密にした。本研究では日本の5-5-500基準導入に伴う影響を米国の移植状況に照らし合わせ検討した。

方法: UNOS transplant registryから、2015~21年にHCCでMELD exceptionを得た患者を抽出、移植時摘出肝病理所見に基づきMilan基準と5-5-500基準の内外の5年生存率を比較した。また、NLRB導入前後でのそれぞれの基準外の比率を比較した。

結果: 対象は6175名、Milan基準外1582名(25.6%)、5-5-500基準外930名(15.1%)であった。それぞれの5年生存率はMilan基準内・外で74.2% vs 59.2% (p<0.001)、5-5-500基準内・外で71.1% vs 63.9% (p<0.001)であった。Milan基準内とMilan基準外/5-5-500基準内の生存率は74.2% vs 58.5%(p<0.001)で有意差を認めた。NLRB導入前後で5-5-500外は15.5% vs 14.0%と低下し(p=0.156)、Milan基準外は26.6% vs 23.3%と有意に低下した(p=0.007)。

考察: 米国での移植成績を検討した結果、5-5-500基準内で良好な移植後生存率が担保されていたが、Milan基準内に対しては悪化を認めた。またMELD exceptionの適応を厳格化したことで基準外の移植は減少傾向にあった。術後予後の点で5-5-500基準はacceptableだが、日本におけるHCC患者に対する死体ドナー利用の待機優先ルール制定に向けてはさらなる議論が必要と考えられる

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top