移植
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肝癌に対する肝移植:Japan criteria導入後の現状と展望
奥村 晋也伊藤 孝司政野 裕紀小木曾 聡穴澤 貴行内田 洋一朗福光 剣秦 浩一郎波多野 悦朗
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s214_1

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抄録

背景

肝癌に対する肝移植の保険適応基準は、Japan基準が導入され適応拡大がなされた。Japan基準適応後の当科での肝癌に対する肝移植の現状を示し、今後の展望について議論する。

方法

1999年1月より2021年12月までに当院で施行した肝癌に対する肝移植症例250例を対象に後ろ向き検討を行った。当院における肝細胞癌に対する移植適応は、2006年以前は大きさ個数に制限を設けず。2007年以降は京都基準内とした。保険適応外は私費で施行。ミラノ基準・京都基準・Japan基準による、移植後生存率・再発率・予後因子の解析を行った。Japan基準導入による保険適応内症例数の変化について検討した。再発形式と再発後の治療について検討した。

結果

各規準を満たす症例の成績は良好であるのに対し、各規準をすべて満たさない症例での再発率は3年で65%と極めて高かった。術前治療で基準内にダウンステージ出来た症例の予後は良好であった。再発危険因子は、京都基準外(ハザード比:2.7、P < 0.01)と術後病理での低分化型肝細胞癌(ハザード比:2.2、P <0.01)であった。京都基準内での後ろ向き検討では、Japan基準導入により保険適応となる患者数は18%増加した。全検討期間内で14%に再発を認めたが、切除も含めた集学的治療により再発後5年以上の長期予後が得られている症例が複数存在した。

結語

Japan基準導入による適応拡大に伴い、保険適応となる症例数の増加が見込まれる。再発抑制や再発後治療が、長期生存の鍵となると考えられる。

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